二つのフラメンコ

フラメンコは日本でも何度か見に行っていたが、ぜひとも本場で見てみたかった。出来れば、あまり大きくないタブラオで。

以前、スペイン料理を食べながらフラメンコショーを見に行った時、たまたま相席になったオジ様方に聞いた様子が忘れられなくて。夜の閉店時間が過ぎても、ノッてしまったダンサー達は踊りをやめない。疲れ果てて熱が冷めるまで踊り続ける。

―――本当のフラメンコはそれから始まる

今思えば、誇張してるのかもしれないけれど。いかにも、情熱的なスペインのイメージにぴったりと合う。その後暫くして、スペイン料理店などでショーを見たときも、ダンサー達はステージに上がる前から盛り上がっていた。控え室から聞こえるギター。声。手拍子。テンションを上げてから、彼らは現れた。

そして。
セビリアで見たフラメンコ。小さなタブラオで見る願いは叶わなかったが、“芸術”としてのフラメンコを堪能させてもらった。大劇場で、一流アーティストによるショー。客席と舞台は遠かったが、割合前の方の席だったのでよく見えた。背筋をピンと張って、挑むような眼差しを投げかけてくるダンサー。情熱だけじゃなく、どこか切ない歌声。華やかな衣装。どれもが素晴らしかった。でも、日本で見たときにも思った事だが、ただ若くて綺麗な女の子が踊っていても、それほど心に響いてこない気がする。華奢な少女より、色んな経験を積んだ“オンナ”の踊りだと思う。今回見たのは、大勢のダンサーが入れ替わりに登場して、ソロだったり何組かで一緒に踊たりしていた。分かる曲は、『カルメン』くらいだったが。激しいリズムに引き込まれ、こちらも息があがってしまいそうだった・・・

加えて、予定外のフラメンコを見る機会があった。
グラナダに行ったとき、添乗員さんの申し出で、『ジプシーのフラメンコショー&アルハンブラの夜景』ツアーが急遽決行された。(注:別料金)

「この前のフラメンコショーとは別物ですからね!」と添乗員さん。

場所は、ジプシー地区の『サクロモンテ』。サクロモンテの丘では洞窟住居(横穴を掘って住んでるらしい)の中で、ジプシー達が家族単位でフラメンコショーを行っている。いくつもあるようだが、私達が行ったのは添乗員さんの顔馴染みのところのようだった。私は、ショーにも興味があったが、それよりも『アルハンブラの夜景』に惹かれて行く事にした。さすがの私でも、一人で夜で歩く雰囲気ではないので。

マイクロバスが迎えに来て、希望者だけ乗り込んだ。ツアー全体の半数いかない人数だった。ハードスケジュールで、殆どの人はもうグッタリのようで。あまり乗り心地の良くない乗り物で、会場となる洞窟へ到着。
やる気のなさそうな、無愛想なおね―さん達が椅子に座り込んでる前を通って室内に入る。結構、狭い。白く塗られた壁に沿って、椅子が並べてあった。ぶつからないか?ってくらいの距離感。自家製のサングリアを出され、いよいよショーが始まる。これで、踊りが期待できれば文句なしなんだけど・・・

添乗員さんの言葉、間違いではなかった。

確かに別物、である。張り切っているのは太ったおばさんだけで、おねーさん達は、ノリが悪い。三人くらい娘さん達が踊ったが、ただ歩いてるようなコもいたし。十歳くらいの少女は、割合上手かった。

太ったおばさんに誘われ、私達も踊った。お約束ではあるが、自分達で踊りだすって雰囲気じゃなかったなぁ。一緒に参加したフラメンコを習ってる人でさえ、なんか居心地悪そうだった。添乗員さんの話では、彼らはよく喧嘩してるそうだから、ご機嫌斜めな時にあたってしまったのでしょう。

何となく終わった、フラメンコ。
だけど、私には本当の目的が控えていた。アルハンブラの夜景。

素晴らしい。その一言に尽きた。時間を忘れて、見入ってしまうほどに。これで、モヤモヤした気分が全て吹き飛んだ。

参加して、良かった。

                                  

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