絶景よりトイレ Rondaへのアクセス
鉄道:マラガから約2時間半セビーリャから約3時間
バス:マラガから約2時間半

スペインにはいわゆる“公衆トイレ”がほとんど無いらしい。添乗員さんから、ツアーを開始して早々に説明を受けた。なんでも、衛生・安全面もさることながら、経済的な面も考えられたとか。公共機関が“公衆トイレ”を管理するのではなく、土産物店や飲食店のトイレを貸してもらうカタチにしたのだ。一応、ルールとして使用者は何か購入する条件で。つまり、“トイレ”を提供してもらう代わりに、店の収入もアップって事で。観光収入が地元に直に流れる仕組みと言うか。バル(Bar)と呼ばれる、軽食とドリンク(アルコールも)が楽しめる店も多いようだ。

でも、コレ。ハードスケジュールな団体旅行客には、かなりメイワクな慣習(システム?)である。

とりあえず、始めは良かった。移動途中で休憩するのは、だいたい軽い食事とコーヒーが飲める店だったが、物珍しくもあり添乗員さんに教わったスペイン語を使って楽しんでいた。教わったのは、コーヒーとミネラルウォーター(ガスあり、ガス無し)の頼み方。しかし、だんだん面倒になってくる。短い休憩時間の中で、トイレを借りたり飲んだりで大変だったが仕方が無い。確かに、気候的に暑いので喉も渇く。だから、お持ち帰りも出来るミネラルウォーターを良く頼んでいた。バスの中でも飲めるからである。クーラーが効いたバスの中、添乗員さんやガイドの説明も、目的地付近に近づくまでほとんど無いので、暇だから寝るか食べるかしてるしかない。

ところが。長距離移動の果てに一騒動起こった。

目的地は、ロンダ。アンダルシアに位置し、グアダレビン川の刻んだ渓谷の両側に広がる村である。有名なのは、渓谷をまたいで広がる旧市街と新市街を結ぶヌエボ橋。橋の上から見下ろすと、岩山の上に作られた街の景観が実感できるとの事だが。

あの時は、それどころではなかった。

スケジュールが押していた為、途中のトイレ休憩が取り消しとなったロンダへの移動。今までは、二時間に一回程度の休憩があった為、自分の中では自然とそのペースに合わせていた。しかし、時間が無いとの事でロンダまで休憩は無し。一抹の不安を抱えながらも、しょうがないな、と思っていた。

しかし、山道をクネクネ登って到着したロンダのバスターミナル。外に出た途端、ホッと気が緩む。皆もそうだったのだろう。すぐにトイレ休憩になると思っていた。
が。
「この先に、景観が素晴らしい所がありますんで、このまま行きます。トイレは、そこにありますので。もう少し、我慢してくださいね」
添乗員さんの無情なお言葉。

―――景色なんて、いいから!

と、多分全員思ったはず。

「どれくらいですか?」と誰かが聞くと、15分だか20分だか言っていたような。今となっては、それすらあやふや。もう、気持ちはトイレのみ。これも、皆気持ちは一緒。間髪をいれずに、東西のオバサマ方から抗議の声が上がる。もう、悲鳴に近い。

でも、添乗員さんは強かった。もちろん、聞く耳持たず強行出撃である。仕方なく、私を含む一人参加した者、友人同士で参加した若者達が添乗員さんに大人しく従う。その後に、抗議をしていたオバサマ方の家族連れで参加したグループが続く。

こうして、悲壮感&険悪な雰囲気漂う一行は先を目指したのであった。

私自身、本気で危険な状態だったのでせっせと歩いた。添乗員さんも宥めすかしながら皆を急がせる。でも、後ろのグループからはひっきりなしに、「もう、限界」的な東西の言葉が飛び交っていた。

もう、途中から前しか見ていない。道の両脇には、可愛いみやげ物屋やシックなバル。そしてヌエボ橋が見えてきたが、私達にはタダの道の延長。眼下には、絶壁の素晴らしい景観が広がってる、はず。でも、今は目的地に行くまでの道でしか、ない。

そこで、なんか違和感に気づく。静かだ。あんなに騒いでたオバサマ達の声がしない。私も、少し前から「諦めたのかな?」程度には思っていたが、自分も余裕が無いので振り向きもしなかった。

しかし、振り返った添乗員さんの叫びに驚いた。刺激、与えて欲しくないんだけど・・・

「あれ!○○さんや××さん達は、どこですかー?!」

仰天したその他の面々、慌てて後ろを見る。確かに、姿がない。あの騒いでたオバサマ達が消えている。もう、パニクッた添乗員さん、申し訳なさそうに縮こまってる彼女達の家族を問い詰め始めた。それによると、我慢の限界に達した彼女達は途中で『バル』に駆け込んだらしい。しかも、困惑した家族はその『バル』の位置を説明出来ず。

添乗員さん、パニックの頂点に達する。

「皆さん、ココで動かないで待っててください!」

引き止める間も無く、走り去る彼女・・・・

―――おい、おい、放置?

呆然とする私達。こっちも、限界近いんですけど?

動くに動けず、立ち尽くすこと数分、添乗員さんが一人で戻ってきた。やはり、オバサマ達が消えた『バル』が分らなかったらしい。それよりも、放置した私達の事を思い出したからかも。なんせ、私達もトイレに行きたいのだ。それに、更にココで時間を取られるとスケジュールが修正不可能になる。

結局、消えたオバサマ達の家族を橋の袂に残し、残りのメンバーは再出発となった。とにかく、黙々と。

やっと着いた目的地は、断崖に面したヌエボ橋が特に美しく見える所、らしい。でも、速攻で「トイレ、何処ですか?」の私達。いや、危機一髪。

まぁ、人心地ついて、なんとか景色に注意を向ける余裕が出たので、テラスから絶景を楽しみましたが。少し休憩し、例の家族が橋の袂で待っているので早めに切り上げ戻る事になった。

帰り道は、急ぎ足ながらも景色を楽しめた。橋からの景観も、凄い。あまりの高さに、何でこんな所に街を作るかなー?と思ったり。美しいと言うより、少し怖い。

そして、橋で再開したオバサマ方。申し訳なさそうにシュンとしてる人、開き直って添乗員さんに反論してる人、様々だった。空気がかなり、険悪。でも、添乗員さんはこれ以上こじらせるのを避ける為、言いたい事を我慢してる様子。

皆が揃った所で、数十分のフリータイム。

小さなお土産屋さんが数件あるだけだけど、短い時間なので問題無し。しかし、こんな小さな街なのに、しっかり闘牛場はある。なんでも、スペイン最古の闘牛場とか。闘牛博物館も併設されていて、3ユーロ(当時)くらいで見学できるらしい。私は、興味が無かったので見なかったけど。

素晴らしい景色のロンダ。少し、勿体無かったな、と思う。小さな街・国が大好きなので。
いつか機会があったら、またゆっくり訪れたい。

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